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Vol.21 Premiership; Liverpool VS Arsenal, Anfield 15.08.2010

from NLW No.429 - September 07 2010  
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下村えり
Eri Shimomura
リヴァプール在住のフローラル・デザイナー。ファンとして長年プレミアリーグをウォッチし続けるうち、日本からの取材コーディネートや原稿執筆を手がけることに。スカウス・ハウスのメールマガジン「リヴァプール・ニュース(NLW)」に『Footballの旅』と『リアルエールのすすめ』を不定期連載中。
【 Introduction:はじめに 】
2010-2011フットボールシーズンの幕開けです!
今シーズンもどんなドラマが待ち受けているのか、いちフットボールファンとして胸が躍ります。

ライブ・フットボールの模様をいくらかでもフレッシュに、また、ワイルドに(?)お伝え出来ればと思っています。
みなさま今シーズンもどうぞよろしくお付き合いください。

【 Anfield:アンフィールド 】
素晴らしい晴天となった日曜日の昼下がり、アンフィールドは信じられないほどの眩しい光を放っていた。
スカウサーはもちろん、インターナショナルなファンの多いリバプールFC。今日のアンフィールドは、夏休みを利用してか各国からの人出が加わって、フェスティバルのようなにぎわいである。
最近見たインターネットの記事によると、一番安く観戦出来るフットボールスタジアムの席のランキング(UK)で、アンフィールドはなんと全体で一番の高値になっていた。結構意外だと思うのは私だけなのだろうか?
( http://money.uk.msn.com/football-finance/articles.aspx?cp-documentid=154368814 )

やはり、新居移転がホールドになっている分、少しでも稼ぎが欲しいのかもしれない。新監督と新メンバーを迎えたアンフィールドに、今シーズンはどの様な展開が見られるのだろうか。ファンの切なる願い“リーグ優勝”には届かなくても、最低でもベスト4入り。そしてUEFA Europa Leagueの王冠獲得も外せないターゲットになるだろう。

【 Today's Match:今日の見どころとRoy Hodgson監督 】
6年間のベニテス政権がファンの見守る中で終結したのはついこの前のこと。一部ではラファ続投の見通しもあったが、過半数のファンはそろそろ引き際だとは感じていたようだ。イスタンブールの奇跡の王冠はあったとは言え、先シーズンはカップ1つどころか、UEFA Champions Leagueでのグループステージ敗退、リーグにおいては4位以内どころか7位に終わり、さらに共同オーナーTom HicksとGeorge Gillettの所有権争いも加わって、ファンとしては落胆と失望、不安と疑惑の残るシーズンになってしまった。

解任したベニテスがよりによってセリエAとチャンピオンズリーグを制したイタリアのインテルの新監督に就任し、後ろ髪を引かれそうなファン達の声もあったが、ワールドカップが終わるころにようやく、新監督Roy Hodgsonの名前がアナウンスされた。

彼はイギリス国内よりも海外での経験が長く、スウェーデンやノルウェー、デンマークなどの北欧や、イタリアのクラブチーム、1994年アメリカワールドカップではスイス代表チームの指揮を執った。
そしてリバプールに来る直前は同じプレミアリーグFulhamの監督を2007年より3季務めた。

フルアム監督就任時の彼の任務はプレミアリーグ残留であったが、それを達成したばかりでなく、UEFA Europa Leagueの出場権獲得、FAカップ準決勝進出、さらにはUEFA Europa Leagueでクラブ史上初の決勝進出を果たしたのだ。

私個人、彼の名前がリバプールの監督候補に挙がった時は、最も相応しい適任者だという気がした。世界的に名を知られるビックネームとは言いがたいが、コツコツと辛抱強く努力を重ね、1つずつ慎重に駒を勧めていくタイプのマネージャーである。さらに、海外との連携も強いためフリーエージェント等にも抜群のコネがありそうである。そして人望も厚い。

新しくなったのは監督ばかりではない。新監督就任後すぐに、Yossi Benayounとのトレードにより、イングランド代表のミッドフィルダーJoe ColeがChelsea FCより加入した。ファン達にとっては今もトラウマとなっている、1年前のXabi Alonso放出の穴埋めとなるのだろうか。Alonsoとは違ったタイプのプレイヤーとはいえ、Joeへの期待は今最高潮に達している。
Joeがこのチームにうまくブレンドされ、Benayoun以上の(できればAlonso並みの)功績を残すことができるかどうかが、今シーズンの大きな焦点になろう。

一方、今日のアウェイチームArsenalだが、先シーズンは終盤の追い上げで3位に食い込み、意地を見せた。しかし実際のところは5年間無冠が続き、ファンたちもいささか痺れを切らし始めている様子も伺える。ベンゲル監督は“成功するには時間を要する”と、自分のチームを地元フランスのチーズ作りに喩えてコメントをしているが…。
ここ数シーズン、このチームは、カップゲームのほとんどを2軍チームで戦わせるなど、徹底して若手の育成に力を注いできた。それでいて、相変わらずの連携プレーと美しいパスワークは健在。豊富なミッドフィールドに加え、アタッカーは技術が高く、タレント揃いである。昨年はエースのアデバヨールを失ってもまったく影響が無かった。唯一言わせて貰えば、守り…特にGKが弱みだろうか。
監督もあえてその部分に触れたがらない所を見ると、アーセナルではタブートークなのかもしれない。

アーセナルは今シーズン、ディフェンスラインに2人の若手タレントを補充した。
Laurent Koscielny(フランス)とオランダクラブ所属だったベルギー代表のThomas Vermaelenである。今日はこのニューフェイスの姿も見れるのだろうか。

しかし残念ながら、シーズン初めにも関わらず数人の怪我人を抱え(Bendtner、Djourou、Ramsey)、さらにスター選手のCesc FabregasやRobin van Persieも100%のフィットではないという情報が入ってきた。
リバプールとアーセナル。“リーグタイトル”という同じ至上命題を持つもの同士となった今日の開幕戦、どんな展開を見せてくれるのか実に楽しみである。

【 Kick Off:試合開始 】
アウェイサポーターが僅か2000のシートをびっしり埋め尽くし、アンフィールドはほぼ満席に近い観客数で真赤に染まった。リバプールサイドはTorresがベンチ入り、今日デビューになるJovanovicと新メンバーのJoe を真ん中に加えて、4−2−3−1の攻撃的フォーメーションは相変わらずであった。
アーセナルはなんと、Cesc FabregasとRobin van Persieがスタメンを外れた。
気になるゴーリーはAlmuniaが務めるようだ。
いつもの儀式“You’ll Never Walk Alone”の大合唱が終わると、試合は定刻16時、黄色のアウェイシャツに身を包んだArsenalのキックで始まった。


<前半>
初めの数分間は、両者とも様子をうかがいながら、やや慎重にボールを前へと進める。最初のチャンスは試合開始5分、Arsenal に巡ってきた。リバプールMF Mascheranoによるハンドのファウで、アーセナルがゴール30ヤードからのフリーキックを得る。MF NasriからのチップをDF Vermaelenが鋭いシュート。しかしリバプールGK Reinaが見事にカバーし、場内からため息が漏れる。

8分にはJoe Coleがこぼれ球を上手く拾い、中央部で待ち構えるMF Jovanovicにパス。Jovanovicは見事な力強いドリブルでアーセナルのディフェンスを次々に払い落とし、ゴール右のKuytにパス、そしてKuytからのクロスが再びJovanovicを目指すがわずかに合わず、ボールはアーセナルGK Almuniaの手に収まった。

20分、アーセナルDF Eboueに対するMF Gerrardの遅めのタックルがファウルの判定。Nasriのフリーキックはリバプールの壁にストレートに当り、チャンスを失う。

相変わらず美しいパスワークを見せつけるArsenalサイドではあったが、リバプールも相手のリズムを崩しにかかる。明らかに今シーズンのリバプールは守備が違っていた。Hodgson流マンツーマン方式で、徹底的に至近距離でマークし、ゴール脇のポストにも2人カバーが入った。

37分には相手のゴール前からリバプールDF Carragherがロングボールを前線へ送る。Coleはオフサイドポジションだったが、俊足ルーキーJovanovicが彼を追い越して走る。そしてゴール左からシュート。しかしボールはゴールの上を通過する。

ホーム・リバプールはこの後もDF Johnsonのオンターゲットショット、コーナーからの鋭い攻撃など、ハーフタイム前に何としても先制点をとアウェーサイドをプレスする。しかし、場内のアナウンスがロスタイム1分と放送された直後、リバプールにとっての悲劇が起きた。左コーナー脇でボールをキープしていたアーセナルDF Koscielnyに、Coleが多少強引なスライディングでタックル。
Koscielnyは足を挟まれた格好で倒れ、駆けつけた主審Martin Atkinsonは躊躇することなくレッドカードを掲げた。
アンフィールド場内ではしばらくざわめきが続き、それが収まらないうちにハーフタイムとなった。

<ハーフタイム>
まさか、あの穏やかな性質のJoeがレッドカードを貰うなんて、本当に信じられない。彼にとって最悪なデビューゲームになってしまった。
正直な話、このぽかぽか陽気とちょっとマンネリムードの中、0−0のまま前半は何も起こらないと思い込んでいたため、わたくし睡魔が襲って、ウトウト気分。
しかしまさかのJoeのレッドカードで一気に目が覚めてしまった。トホホ…。

<後半>
負けられない開幕戦を、強豪アーセナル相手に10人で戦うはめになったリバプール。後半を迎えたアンフィールドには多少緊張感が漂っていた。
Hodgson監督はハーフタイムにどのような指示を選手たちに送ったのであろうか。

数的不利に立つリバプールであったが、後半開始直後の46分、アーセナルのこぼれ球を拾ったMascheranoがフレンチマンFW Ngogにパス。Ngogはゴール右横6ヤードから鋭くシュートを放つ。1−0!
アンフィールドは一気に活気を取り戻した。

なんという展開だ。一人少ないリバプールは当然守りを中心に展開するものと思っていたが、速いテンポとリズムで先に仕掛け、先制点をもぎ取った。
勢いを得たリバプールは10人という不利な情況をプラスに変えるかの如く、アーセナル陣営に迫る。

56分には相手のゴール前でフリーキックを得た。Gerrardの蹴ったスウィングボールをNgogが頭であわせるが、ボールはバーを越える。会場から大きなため息が漏れた。
アーセナルも同点に追いつこうとリバプールのディフェンスを突破しにかかる。
しかし今日のリバプールの守りは堅く、揺るがない。

60分、初めての選手交代がWengerより告げられた。Eboue とMF Wilshereに代わって、MF Rosicky とMF Walcottが加わった。完全に攻撃態勢を作ってきた。

続いてリバプールも66分にサブの投入。今日初登場で大変素晴らしい動きを見せてくれたJovanovicに代わってMF Maxi Rodriguezが入った。

73分、アーセナルに同点のチャンスが巡ってきた。FW ChamakhへのGerrardのファウルから得たゴール前フリーキック。今度はサブで入ったばかりのWalcottが蹴る。ボールは右から左にカーブしながらゴールを襲うがReinaの指先で跳ね返される。惜しい。

その後再度リバプール側に選手交代。ゴールを決めたNgogに代わって観衆お待ちかねのFW Torresの登場だ。歓声と拍手でスタジアムが一気に沸いた。
アーセナルも76分、MF Diabyを下げてFW van Persieを投入。更なる前線強化でこの局面を突破しにかかる。

86分にはアーセナルRosickyが素晴らしいシュート。しかしReinaの見事なセーブによって阻まれた。

さらに87分には、アーセナルMF Arshavinからゴール右手を走るvan Persieに見事なパス。それを阻止しようとReinaがゴールを開けてボールを追うが、ボールはvan Persieのへダーでゴール前に跳ね返る。キーパーの居ないゴール最終ラインでリバプールのディフェンス4人とアーセナルのWalcottが争う。あわや同点かと思われた、恐怖のゴール前スクランブルであった。

そして最後の最後、試合も終了に近づいた90分に決定的な場面が訪れた。左サイドからNasriがボックス内へロングパス。それが眩しい夕日と一緒になってReinaを襲うが、Reinaは本能のまま両手でボールを跳ね返す。しかしそのボールをChamakhがゴールへ押し込もうとする。Reinaは更に阻止しようとボールをハンドルするが、運悪くボールは跳ね返ってネットの隅に収まった。
Reinaのオウンゴールで1−1。

【 Ending:試合終了 】
終了のホイッスルが鳴り響いた。
なんとも後味の悪い結末で、アンフィールドはしばらくざわめきが収まらない。
リバプールとしては10人で試合を上手くコントロールし、先制点まで獲ったのだが、最後の最後に2ポイントを失うことになった。アーセナルとしては、リバプールの執拗なプレスにより行き場を失いかけたものの、最後まで諦めずにリバプールの守りにチャレンジを続け、そのリワード(ご褒美)が貴重な1ポイントをもたらした。

シーズン最初の試合にしてはJoe Coleの退場などドラマもありで、ナカナカ面白いシナリオだった。今後この両者は、チャンピオンChelsea やManchester Utdなどの上位チームを相手にどのような戦いを見せてくれるのだろう。
今シーズンも面白くなりそうだ。

下村 えり(Eri Shimomura)


【 マッチ・データ 】
 Premiership 10-11
 Liverpool VS Arsenal
 Anfield Stadium
 15 August, 2010  16:00 Kick Off
 Attendance: 44,722
  リバプール アーセナル
スコア 1(Ngog 46) 1(Reina 91 OG)
ターゲットショット
コーナーキック 11
ファール 15 17
オフサイド
イエローカード
レッドカード 1(Cole 46)
ポゼッション 35.9% 64.1%

 Liverpool
  Reina, Johnson, Carragher, Agger, Skrtel, Gerrard, Jovanovic, Mascherano,
  Kuyt, Cole, Ngog.
  Subs Not Used: Cavalieri, Aurelio, Babel, Kelly.
  Goal: Ngog.
  Booked: Gerrard.
  Sent Off: Cole.

 Arsenal
  Almunia, Clichy, Vermaelen, Koscielny, Diaby, Nasri, Eboue, Sagna, Wilshere,
  Arshavin, Chamakh.
  Subs Not Used: Fabianski, Vela, Song, Gibbs.
  Goal: Reina(OG).
  Booked: Wilshere, Rosicky, Koscielny.

from NLW No.429 - September 07 2010     

Copyright(C) 2014 Eri Shimomura & scousehouse

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